はじめに
昨年(令和5年)、仕事中に熱中症にかかり4日以上休業した人の数が、富山県内で過去最多となったことから、富山労働局は職場での熱中症対策を徹底するよう呼びかけています。
そこで今回は、雇用主や管理者の方向けに、職場での熱中症の主な原因と予防策についてご紹介します。
従業員の安全を確保するためにどのような対策を講じるべきか参考にしていただければ幸いです。
1.富山県内で仕事中の熱中症が去年最多
富山労働局によりますと、県内における令和5年の仕事中に熱中症にかかり、4日以上休業して労働災害と認定された人の数は、前の年より10人増えて18人にのぼりました。
統計を取り始めた平成22年以降では最多だということです。
業種別にみると、最多は製造業の9人、次いで運輸交通業と通信業、接客娯楽業がそれぞれ2人、建設業、貨物取扱業、商業がそれぞれ1人となっています。
また、働いていた場所をみると、屋内が12人、屋外が6人です。
屋内の風通しが不十分な場所で、高温多湿の環境のもと働いていた人が熱中症にかかったケースが多くあったということです。
(参考:富山労働局HP)
2.主な原因は高温多湿
2-1.熱中症予防を目的に導入された国際的な指標『暑さ指数』
熱中症予防のために活用したいのが『暑さ指数』です。
熱中症を引き起こす条件として「気温」は重要ですが、
日本の夏のように蒸し暑い状況では、気温だけでは熱中症のリスクは評価できません。
暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、熱中症予防を目的に導入された国際的な指標で、体と外気との熱のやりとりに与える影響の大きい、「気温」、「湿度」、「日射・放射」、「風」の要素をもとに算出されます。
✓気温や湿度が高い
✓日射・放射が強い
✓風が弱い
場合は、熱中症リスクが増大します。
(※放熱しにくい作業服等を着用する場合には、その要因を加味して熱中症リスクを判断する必要があります。 )
2-2.暑さ指数を調べてみよう
暑さ指数を調べる方法はいくつかありますが、一般的には天気予報サイトや気象情報アプリなどを利用することが便利です。また、専用の測定器で調べることもできます。
暑さ指数を調べる方法を2つ紹介します。
■環境省のウェブサイト
夏季には、気象庁データに基づいた、各地域の暑さ指数の実況値と予測が「熱中症予防情報サイト」で公開されています。
■暑さ指数計で測定
暑さ指数を測定する機器は市販されております。
購入時にはJIS規格に適合しているか確認してください。
暑さ指数が28以上になると「厳重警戒」、31以上になると最もリスクの高い「危険」となります。
3.職場での熱中症対策
本格的な暑さを迎える前に、今からできる予防策を取りましょう。
・暑さ指数の把握
・エアコンの試運転を実施
・工場や倉庫等、場内が広くて空調が効かない場所には、
移動式スポットクーラーや業務用扇風機設置を検討
・通気性の良い服装を準備
・熱中症対策応急セットの設置
・緊急時の対応を確認し従業員に周知
図:スポットクーラー
まとめ
体が暑さに慣れていない5月や6月に熱中症にかかり死亡したケースもあります。
日頃から温度や湿度に加えて、暑さ指数に気を配りましょう。
熱中症の発症は、例えば気温が25℃~30℃くらいでも湿度が極端に高い場合に発症することもあります。
湿度が65%を超えると熱中症への警戒が必要になってきます。
エアコンや除湿機を積極的に活用して室温を下げながら、湿度も40~60%にコントロールしていきましょう。