1,はじめに
2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。
建築物分野においても省エネ化の推進が求められており、「ZEB」が注目を集めています。
この記事では、「ZEB」の定義や種類をご紹介します。
2,ZEBの定義
ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称で「ゼブ」と呼びます。
建物の高断熱化や設備の高効率化などの「省エネ」と、太陽光発電などの「創エネ」を組み合わせて、年間で消費する建物のエネルギー収支をゼロにすることを目指した建築物のことを指します。
「エネルギー収支が正味(ネット)でプラスマイナスゼロになる」という意味で「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」と呼ばれています。
日本政府は2030年までに新築の建築物すべてをZEB化することを目指しています。
3, ZEBは達成度に応じて4種類ある
年間のエネルギー収支をゼロにするのは容易ではないため、環境省は4段階の評価方法を設定しています。
ZEBの達成度が高い順に紹介します。
3-1,『ZEB』(ゼブ)
省エネ+創エネで建物すべてのエネルギーを供給する(正味で100%以上削減)
『ZEB』とは、年間のエネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの建築物です。
省エネ(50%以上)と創エネによって、100%以上のエネルギー消費量の削減を実現しています。
環境負荷がほとんどない建物だといえるでしょう。
3-2, Nearly ZEB(ニアリー ゼブ)
省エネ+創エネでほとんどのエネルギーを作る(正味で75%以上削減)
Nearly ZEBとは、『ZEB』に限りなく近い建築物として、ZEB Readyの要件を満たしつつ、再生可能エネルギーにより年間のエネルギー消費量をゼロに近付けた建築物です。
省エネ(50%以上)と創エネによって、75%以上のエネルギー消費量の削減を実現している建物です。
3-3, ZEB Ready(ゼブ レディ)
高断熱化や高効率設備より省エネを図る(正味で50%以上削減)
Nearly ZEBよりさらに条件が緩いのがZEB Readyです。
ZEB Readyとは、将来的にZEBを見据えて、*外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備えた建築物です。(*外皮[がいひ]…建物の外周部分、すなわち建物の外壁、屋根、窓等を指します。)
省エネによって50%以上のエネルギー消費量の削減を実現しています。
ZEBやNearly ZEBとは異なり創エネはありません。
エネルギーを効率良く使える空調や照明機器の導入、および高断熱ガラスへの変更など、既存施設の改修・改築によって達成することも十分可能です。
3-4, ZEB Oriented(ゼブ オリエンテッド
10,000㎡以上の広い面積のZEB
ZEB Orientedは、2019年度に設けられた新たな基準で、延べ面積が10,000㎡以上の建築物が対象となります。
なぜ、こうした大規模建築に別途基準を設けるのかといいますと、
10,000㎡以上の建物は、年間の新築着工数が1%程度と件数は少ないのですが、エネルギー消費量ベースでは36%程度と大きく、新築建築物全体の省エネに大きな影響を与えているからです。
ところが10,000㎡以上の大規模建築物は、技術的なハードルが高いなどの理由でZEB化が進んでいません。
よって、大規模建築物に対応したZEBの定義拡充により、ZEBの普及を促進しようというのがねらいです。
ZEB Orientedは、4つの分類の中で最もエネルギー削減率が低い建物です。ZEB Readyを見据えた建築物として、外皮の高性能化及び高効率な省エネルギー設備に加え、更なる省エネに向け効果が高いと見込まれる未評価技術を導入した建築です。
建物の用途によってエネルギー削減率が個別に設定されています。
■オフィス、学校、工場など…40%以上削減
■ホテル、病院、百貨店・飲食店、集会所など…30%以上削減
4, まとめ
ZEBは、持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩です。環境保護と経済的な利益を両立させる建築の未来形といえるZEBの概念は、今後ますます重要性を増していくでしょう。
ZEBの達成はハードルが高く感じるかもしれませんが、「ZEB Ready」は、創エネを行わなくとも、省エネのみで満たせます。設備更新が中心となりますので、既存建物でも進めることができます。基準を満たせるレベルから取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。
次の記事では、ZEBのメリット・デメリットについてご紹介します。